錦帯橋の架橋技術
講師 中村 雅一氏 岩国伝統建築共同組合理事長
岩国市役所主催 錦帯橋国際シンポジウム 、2008年1月27日 岩国観光ホテル
岩国市役所配布(2008年)、岩国中央図書館所蔵
(1〜11頁) その6
第二部 パネルディスカッション
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錦帯橋の架橋技術
・アーチ橋の作図
・現寸図の作成
・型板の作成
・墨付け
・用材の加工
・アーチ橋の桁組
・アーチ橋完成
平成の架け替えで作図を担当した者です
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写真の上は元禄12年(1699年)、棟梁の大屋壽左衛門が書いた図面で、下は平成の架け替えで私(中村さん)が書いた図面です。
殆ど変わっていません。
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現寸図の作成
現寸と同じ大きさの図面を作成する。横幅40mの巨大な図面です
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型板の作成
現寸図から型板を作成する。大工の専門用語でたくさんの情報を記入します
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墨付け
型板を元に木材に墨付けを行う
用材の加工(ホゾの仕上げ作業)
錦帯橋の用材は大きいので専用の道具を作成して、木材を加工します
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用材の加工(かんな仕上げ)
木材表面にかんなをかけます
アーチ橋の桁組(陸組)
現地で組み上げる前に、陸で仮組みします。補強材の鞍木(V字部材)や振止(X字部材)の墨付けをすることもあります
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本組み作業
アーチ橋の桁組
沓鉄に部材をはめ込む作業から始まります。最初の桁を取り付ける角度によって橋中央の高さが決まる。
1番桁から4番桁までは大きな圧縮応力が掛かるので隙間無く丁寧に作業を行います。
5番桁から9番桁までは桁尻を前へ前へ張り出します。
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大棟木取り付け
左右の9番桁の間に大棟木を取り付ける。
最も力が掛かる場所だが、木材の経年変化と沈下量を考慮して棟梁の勘で少し長めにする。この長さ調整が悪いと橋にガタが来る。
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大棟木は型板通りに刻んでいません。
組み上げた木材の自重で円弧が下がります。構造部材の細工が圧縮応力でくっ付き、だんだん短くなります。
また、鋸の厚みで切断部分に誤差が生じています。これを総合的に勘案して、両端を9mm長くし18mm長くしたので
橋の高さは60mm高くなりますが、長期的には沈下して当初計画どおりになります。
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アーチ橋の桁組完成
構造材の次は、補強材の振富め、助木、鞍木を取り付けます。
最後はヒノキの橋板を張り、欄干を取り付けます。
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錦帯橋の木材は雨ざらしなので少しでも腐らない工夫をしています。
また、桁間の寸法など、今の錦帯橋が架かっている川幅をスケールにきれいに割り切れる長さにしている。
不自然さが無いので美しく見える。昔の棟梁の心意気が感じられた。
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