錦帯橋はアーチ構造か?
講師 依田 照彦氏 早稲大学教授
岩国市役所主催 錦帯橋国際シンポジウム 、2008年1月27日 岩国観光ホテル
岩国市役所配布(2008年)、岩国中央図書館所蔵
(1〜9頁) その4
第二部 パネルディスカッション
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錦帯橋はアーチ構造か?
ー世界遺産として見た錦帯橋の価値ー
重力と錦帯橋のアーチ構造について解説します
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錦帯橋は真ん中の3連がアーチ構造です。反りが5m強、支間長が約35mで、重力の影響を考慮すると、当時の棟梁としては精一杯がんばっています。
現在は明石海峡大橋がありますが、当時の構造形式の橋では恐竜の大きさが限界です。
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平成の架け替えの時、古い錦帯橋に1000人に相当する60トンの土嚢を乗せて過負荷試験を行いました。
1000人乗っても大丈夫でしたが、今も昔も1000人の負荷に耐える強度を持たすというのは同じでした。
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実験の結果分かった事は、外側の桁から内側に向かって少しずつ、たわみの形が違っていました。
つまり、上と下から圧力をかけて、外れない様にしています。
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基本的にはアーチの桁材の方向の流れに沿って力の流れが上に行ったり下に行ったりしている。
また、高欄親柱の下にある桁上部の大梁と下部の敷梁で横方向の力を抑えている。
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大型コンピュータに錦帯橋の構造データを入れて計算して分かった事があります
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中央の大棟木に大きな圧力がかかり、大棟木がアーチ構造を支える要だった。
また、アーチ構造保持のためには大棟木を長めにする必要があり棟梁の腕の見せ所だった
木材が経年変化してもアーチ構造が弱くならないように図面より長くしていた。つまり、他藩が大棟木を図面どおりに真似しても、アーチ構造が保てないので
錦帯橋が造れない理由はここにあった。どの程度長くするかは腕のいい棟梁でないと分からない秘伝のようだ。
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60トンの加重を均一に掛けたときと、15トンの加重を半分だけに掛けたときでアーチ構造のゆがみ方が変わる。
これは木材を多数使っているので仕方ない。
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錦帯橋は上からの力を横の支点で押さえている
垂直方向の圧力より横から押さえる力の方が大きい
垂直方向の圧力を加えたときのゆがみ形状が、世界的に一般的なアーチ建造物と同じである
以上から、錦帯橋はアーチ構造と断定できる。
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