究極の名橋 錦帯橋
第二章 錦帯橋の歴史
第1節 岩国の町割がもたらしたもの
岩国市錦帯橋世界遺産推進室 岡崎賢治 その3 11頁
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第1節 岩国の町割がもたらしたもの
1.夢の実現に向けて
(1)橋の必要性
岩国藩初代藩主吉川広家が岩国の城下町の建設を始めた頃、まだ豊臣恩顧の武将と豊臣家が健在で、いつ戦乱が始まるか 不安定な時期であり、戦禍をしのげる防御主体の城下町建設を始めた。 城を置く横山は土地が狭いため、錦川を挟んで対岸の錦見に中下級武士の屋敷と町屋をおく計画にした。 その間を結ぶ橋を建設する計画は当初からあり、幾度となく橋が建設されたと思われるが、記録に残っているのは 1639年の布令と、1657年建設・1659年流失である。父広正の苦労を見て、広嘉は流れない橋を造る決心をする。 -
(2)反り橋の研究
1665年、三代藩主となった吉川広嘉は、支柱を川に建てない飛橋の研究を近習とともに始めた。 当時、刎橋は存在しており、猿橋の見学や中国の文献から石造アーチ橋は知っていたようだが、200mもある錦川への架橋は 当時の技術では不可能であった。
(3)僧独立との出会い
広嘉は、明の亡命僧独立が持っていた「西湖遊覧誌」の写本を作成したが、島から島へ架け渡される橋を見て「会心の奇処を得た」と いわれている。 -
(4)夢の実現
1664年、西湖の絵図を見て、8年後の1672年、錦帯橋創建時の棟梁になった児玉九郎右衛門は広嘉の命で長崎に行っている。 広嘉の薬受け取りが名目であるが、実際は8年間の成果を独立に見せて意見を聞くこと、及び、長崎の眼鏡橋をはじめ九州には 多くのアーチ構造の石橋があるので原理習得にあったと考えられている。
橋脚の築造は石工棟梁の戸川理右衛門、宮原又右衛門が担当した
過去の経験から川の真ん中は流れが激しく流木が多いので、これを避けるため橋脚の数は偶数にした。また、出来るだけ長いスパンで橋脚間を結ぶという 条件から石組橋脚は4基になった。 -
橋脚は、橋梁に対して直角ではなく、流れの向きに応じて第一橋脚102°45′、第二橋脚93°15′、第三橋脚92°、第四橋脚91°と
角度を変えていた。古文書に橋脚にふりを付けたとある。
昭和26年の再建工事では橋脚の中心部は井筒の鉄筋コンクリートで切っ先の角度は一律90度に変更している。
1673年6月28日に橋脚の鍬初めが行われ、同年10月3日から往来が始まっており、僅か3ヶ月で完成している。 しかし、翌1674年5月28日の洪水で、橋脚4基のうち3基が崩落した。湯浅七右衛門の築いた橋脚だけ残った。 湯浅七右衛門によると、原因は橋脚周辺の敷石を強固に敷いたため流れが穏かになったためとの事である。 1674年6月1日より再建工事が始まり、橋脚周辺の敷石を強固にして10月25日完成した。 この橋脚はキジヤ台風まで276年間、幾多の洪水に耐えてきた。 -
2.錦帯橋の名の由来
錦帯橋が創設されたとき、広嘉は江戸幕府の老中松平右京太夫と旗本石川備中守に岩国大橋と書き雛形を送った。 以降、「大橋」と公式資料には出ており、いつ頃から錦帯橋と呼ばれる様になったかは定かではない。
(1)橋脚の改良
1675年、湯浅七右衛門と米村茂右衛門は近江の穴太衆、戸波駿河の元に派遣され石垣の築造法を学んだ。 1677年、河床に敷石を設け、1678年には錦帯橋周辺の河床に捨石を施した。
1741年、雨水が橋脚内部に侵入するのを防ぐため、橋脚上部を塞ぐように、蔓石と亀甲石を新設した。 -
鞍木と助木
1682年、鞍木と助木が考案された。 平成の架け替えのとき、鞍木と助木がある場合と無い場合の強度実験を行った。その結果、強度は32%向上している。 無い場合は、歩くたびに揺れたと想像できる。 -
4 錦帯橋の架け替え
(1)架け替えの財源
1675年より、全階級から橋催相(はしもやい)が徴収され、1678年からは橋出米という恒久的な税金が徴収されることになった。 町家は間口、武士は禄高などに応じて細かく決めており毎年97石(1000万円〜500万円)集めて,20年置きの架け替えに備えた。 しかし、実際は不足分が多く岩国藩の財源から補填している。
錦帯橋は明治時代は国道であったが、臥龍橋ができてからは地方道になり、1966年、上流に錦城橋ができてからは岩国市の市道認定が外れた。 現在、錦帯橋の維持管理と架け替え費用捻出のため入橋料を大人300円、子供150円を徴収している。 但し、横山在住の住民には年間無料パスポートが配られており、岩国小中学生は通学に利用している。 -
(2)架け替えの歴史
表2.1−1に錦帯橋の架け替えや橋板の張替え時期を示す。 1橋あたり20.5年で架け替え、橋板は14.1年置きに張り替えている。 反橋の基底部が腐食するのが架け替えの主な原因である。 - 表2.1−1 錦帯橋架替年表
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